当院は先進医療認定を受けている県内でも数少ない眼科施設です

多焦点眼内レンズは、遠くと近くが見える遠近両用眼内レンズです。2007年に厚生労働省の承認を受け、2008年に先進医療として承認されました。先進医療の詳細は厚生労働省のホームページ「先進医療」をご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/

 

当院は2019年4月に「多焦点眼内レンズを用いた白内障手術」の先進医療施設に認定されました。これにより術前術後の診察等に保険が適応できるようになりました。また、民間の生命保険の“先進医療特約” の対象にもなるため、先進医療に係る費用が全額給付されることもあり、患者様の経済的負担が軽くなりました。手術は通常の白内障手術とほぼ同じになりますが、異なる点は用いる眼内レンズの仕様の違いです。以下にその特徴につき説明していきますが、日本白内障屈折矯正手術学会の多焦点眼内レン情報のサイトも非常に参考になりますのでこちらもご参考にしてください。
http://jscrs-multifocal.org/contents/cost.html

 

多焦点眼内レンズの見え方

単焦点眼内レンズには調節力がありませんので、遠くにピントを合わせると近くが見えません。逆に手元にピントを合わせると遠くが見えませんので、どちらの場合も眼鏡が必ず必要になります。患者さんの希望を踏まえ、手術後の見え方を予想して眼内レンズを決めていきます。

多焦点眼内レンズは単焦点眼内レンズと異なり、遠くと近くの両方にピントを合わせることができます。イメージ図のように、遠くの風景も見え、近くの字も見えるといった遠近にピントを合わせることが理論上は可能となります。しかしながら、より近くの文字をはっきり見たい、長い時間近くの小さい文字を見たい、薄暗い環境で文字を読みたいといった場合には、近用の眼鏡を装用した方が快適に楽に見えると思います。無理せず、必要時には近用眼鏡を装用することもよい方法です。

 

多焦点眼内レンズのデメリット

多焦点眼内レンズは構造が複雑なため、暗所で光が錯乱して見えたり、光の周りにわがにじんで見える現象(ハロー、グレア)が見られることが多いです。多くの場合、時間ともに慣れて気にならなくなる方が多いようですが、この現象が消えるわけではありません。職業ドライバーで夜間運転の多い方などには不利となります。さらに、コントラスト感度の低下(色の濃淡の見極め低下)といわれる見え方の質の微妙な低下が起きます。細かい作業や微妙な色の見極めを必要とする職業の人には向かない場合があります。

デメリットをよく把握し、医師と相談して多焦点眼内レンズの適応を決めることが大事です。デメリットが気になる場合は多焦点レンズをあきらめ、単焦点眼内レンズと眼鏡の併用を検討することも大事です。

また術後の原因不明のぼやけや視力低下を訴えるwaxy visionという症状もあります。このようなwaxy visionが消えない症例、ハロー、グレアが我慢できない症例、多焦点眼内レンズに順応できない症例では、眼内レンズを取り出し、単焦点眼内レンズに入れ替える場合もあります。術後不具合が続く場合は遠慮なく医師に相談してください。

 

眼内レンズの見え方の比較(眼鏡なしでの見え方)

単焦点 多焦点
遠くにピント合わせた場合 近くにピントをわせた場合 2焦点回析型 焦点深度拡大型
遠方距離の見え方 ×
中間距離の見え方
近方距離の見え方 ×
グレア、ハローの強さ なし なし あり やや少ない
コントラスト感度 良好 良好 低下 少し低下

 

 

ハロー・グレアの見え方

多焦点眼内レンズに適している方

  • ・白内障により、視力が低下したり、かすんだり、ぼやけ、まぶしさなど日常生活に不自由になった方
  • ・原則的に白内障以外に目の病気のない方
  • ・眼鏡からより解放されたいと希望している方
  • ・術後の見え方にハロー・グレア現象などが生じることや、新しい見え方に適応するのに数ヵ月かかる可能性があること、眼鏡が全く必要でなくなることはないなど術後の見え方や医師の説明をご理解していただける方

 

多焦点眼内レンズが適していない、注意が必要な方

  • ・夜間運転/職業上等近見作業の多い方(タクシー運転手、トラック運転手など職業運転手、デザイナー、写真家など)
  • ・瞳孔径の小さい方
  • ・高齢で多焦点眼内レンズに順応できないと予想される方
  • ・白内障以外の目の病気や身体の病気がある等を理由として医師が不適当と判断した方
  • ・医師の説明を理解していただけない方

 

多焦点(遠近両用)眼内レンズ使用時の白内障手術費用

当院で行っている遠近両用眼内レンズ使用の白内障手術には大きく分けて2種類あります。

  • ・自費診療の遠近両用眼内レンズ使用の白内障手術
  • ・先進医療利用可能な遠近両用眼内レンズ使用の白内障手術
自費診療の遠近両用の眼内レンズ 片眼350,000円~500,000 眼内レンズによって値段変動(手術費用、眼内レンズ費用含む。乱視も同時に治せます。)

自費診療の遠近両用眼内レンズ使用白内障手術

先進医療利用可能な遠近両用の眼内レンズ 片眼420,000円(手術費用、眼内レンズ費用含む。)

先進医療利用可能な遠近両用眼内レンズ使用白内障手術

当院での先進医療利用可能な眼内レンズの白内障手術は420,000円ですが、ご加入されている医療保険の先進医療特約を利用することにより、手術費用の大半を給付金でまかなうことができます。

詳しくはご加入されている生命保険会社にお問い合わせください。
また、手術前、手術後の検査代、薬代が公的医療保険の適応になりますので、個人の経済的負担が軽減されます